結婚をしていれば、

「お子さんは?」

「まだなんです。」

「作らないの?」

と何度も聞かれる。

何年間も子供を授からない夫婦にとって日常茶飯事です。

夫のあおは、前日に地元の先輩と飲んでいた。

やはり、その日もこんな会話が行われたようだ。

翌日、私に、その時の話をぽつりぽつりと話し出した。

その先輩は5人子供がいて、嫁に浮気され、離婚をして男で一つで5人の子供を立派に育て上げた人だそうです。

木崎 あお(夫)

昨日飲んだ先輩に「なかなか授からなくて・・・」と相談したら、その先輩に

「子ども欲しくて頑張るのもいいけど、出来る時には出来るし、不妊治療までして作ろうとするのはちょっと違うって思うんだよね?そんな事よりも相手を大事に思って、2人の時間を過ごすのもいいんじゃないかな?そうすれば自然とできるから。」

って言われて、俺も「あ~そうだな」って思ったんだよね。

その言葉を聞いて、私はカッとなってしまった。

木崎 ビビ子(私)

そんな言葉、少しも響かない!その人は、欲しくても出来ない人の気持ちなんて知らないのに、そんなきれいごと言ってほしくないよ!不妊治療している人の痛みなんて何もわかってない!その人が不妊治療していて、つらい気持ちとか分かったうえで言うならわかる!その先輩が悪い人なんて思わないし、苦労もしてきてすごい人だってのは分かるけど、その人の嫁は浮気して「お互いを大事に」なんてしてなかったわけじゃん!それなのに5人もできたんでしょ?「お互いを大事に」してなくたって5人も出来た人に私の気持ちなんでわかるわけないじゃん!

堰を切ったように溢れてしまった言葉。

そのまま、夫は黙って「まずい事を言ってしまった」と言う顔をしていたので、その場はそれだけで終わった。



しかし、その夜、私は悶々と考え、心の中で夫を責め続けた。




こないだの2回目のタイミングで、すごく苦労して、気持ちも乗らないのにやっとの思いでタイミングを取ってくれた夫。

男の人はナイーブなのに、本当によく頑張ってくれたと言う感謝の気持ちがありがたかった。

世の中には、不妊治療にさえ協力的でない夫も多いと聞く。

それを思えば、協力的なほうだと思う。

でも、

「できなかったらできなかったで仕方がない。」

「2人だけの人生もあるよ。」

そんな言葉、私だって今まで何人の人に、何回、何十回聞いてきただろう。

「できなかったらできなかったで仕方がない。」

「2人だけの人生もあるよ。」

もうもはや、この言葉は、不妊のカップルに贈るマニュアル通りの言葉と言っていいだろう。

そんな、ありきたりなマニュアル通りの慰め言葉に引っ張られた夫が許せなかった!

予約をしてやっとの思いで4か月間待ちに待って、始まったばかりの念願の不妊治療。

夫は小心者だから「やだな~怖いな~」と言っていたが、私はワクワクしていた。

『諏訪マタ』と言う日本最高峰の不妊治療専門病院にかかれることに、期待と安堵感に満ち溢れていた。

やっと前に進める。

すこしずつでもいい。

何もしてなかった時よりも全然いい。

やっとこれでスタート地点に立てたんだと、とても嬉しかった。

ポリープがあると診断され、手術が必要かもしれないと言われて怖い気持ちもあったけど、
それで夫との赤ちゃんを授かれるなら、身体をズタズタに切り刻まれてもいい!

それで授かれるなら・・・

と前しか見てなかったのに・・・。

それでも、「自然妊娠」が正義だと心の中では思ってた夫。

そして、ポコポコと簡単に5人もの子供を設けることが出来た、なんも考えなしの人の言葉に引っ張られたことに

がっかりしてしまった。

というより、悲しくて、寂しかった。

「できなかったらできなかったで仕方がない。2人だけの人生もいいよ。」なんて思えてたら、
そもそも病院なんて行ってないよ・・・。

私にとったら必要のない言葉。

いらない言葉。

たとえそれが私たちを想って言ってくれた言葉だったとしても。

いらない・・・

私の友人のほとんどは、何の疑いもなく、
「次の病院はいつ?早く2人の子供が見たいなぁ~」

とキラキラした目で言い続けてくれる友達も中にはいて、
私たちに赤ちゃんが出来ると期待してくれるその心に、
「できなかったらできなかったで仕方がない。2人だけの人生もいいよ。」なんて言葉なんかよりも、私は何億倍も救われてきた。

力となって原動力となってきた。

それがプレッシャーになる。

と言う人もいるけれど、

期待してくれてる=可能性はまだある

と解釈できてた。

諏訪マタに予約をして4か月間待って、やっときた初診の日。

私は夫と共にすごろくゲームのスタート地点で位置につく。

お互いの足首をひもで縛って二人三脚だ。

「パンッ!」

のピストルの音で一緒にスタートを切ることができたと思ってた。

診察があるたびに1コマ、1コマ少しずつ進んでいく。

リセットしてしまったら3戻る・・・。

二人三脚だから、進む時も、戻るときも、必ず一緒のコマにいる。

リセットをし、戻ったとしても、スタート地点まで戻ったわけではない。

戻ったけど、何もしなかった時よりは進んでいるから。

そうしてどんな少しずつでも、同じコマを進んでいくんだと思っていた。

ポリープが見つかって、タイミングを2回取って、まだ病院には3回しか行ってないけど、ポリープについて一切知ろうとしていない夫。

タイミング後、病院の結果を自分から一度も聞いてこない夫。

私が話さなかったら何も聞かないんだろうか・・・。薄々気付いてたけど、

あんな言葉一つで引っ張られた夫を見て確信した。

このすごろくゲームでピストルの音と共にスタートを切ったのは私だけだったのかもしれない。

それとも、足首のヒモは、最初からほどけていたのかもしれない・・・。

一緒に病院に行ってくれたり、
タイミングを苦労してとってくれたり、
頑張っている姿も見ていたから、

「そんなことはない!」

と言い聞かせてきたけど、
すごろくゲームでスタートを切って、
サイコロを振りながら進んでいるのは私だけで、
夫は友達や親と一緒にベンチに座って私がゴールするのを応援してくれてるだけなんだと・・・。

夫だって当事者なのに・・・

赤ちゃんは男と女が2人いなければ授からない。

このままではきっと授かる訳がない・・・。

そう思うと涙が止まらなくなった。




「不妊治療」は世間ではナイーブな事のように思われていて、腫れものを触るような事柄として扱われている。

でも、はたしてそうなのだろうか?

なぜそんなに神経質になることがある?

私は他の病気やケガと何が違うんだろうと思う。

頭が痛くなって病院にかかるのと一緒。

そんな事を言ったら、癌になった人に「自然治癒しろ!」って言っているのと同じだよ。

私たちはたまたま「不妊」になっただけ。

最善の治療があれば医療の力をかりて病気を治せばいいだけじゃない?

なんで妊娠だけは「自然」が正義なの?

そりゃ、自然に授かれればそれに越したことないけれど、

悪いところがあれば、直せばいいだけなのに。

悪いところを治して授かれればそれでいいじゃん。

自然妊娠して生まれた子と、不妊治療の末生まれた子は何が違うのだろうか?

子供自体の人生に違いが出るわけじゃないのに。

なぜいけないんだろうか・・・?

もし、病気の人が「自然」にこだわって治療法があるのに治療しなくて、

亡くなってしまったら現実から病気から逃げているだけだと思う。

周りのあなたを大切に思う家族だって、やることやって、辛い治療にも耐えて、病気と闘っても治らなかったとしたら。

それで亡くなってしまっても、悲しいけどきっと納得できる。

最後までがんばったんだもん。

不妊治療だって一緒でしょ?

やることやって、出来なかったら仕方ない。

悲しいけど仕方ない。

そんなことを夜中悶々と考えていたら、一つの思いに気づきました。

それは、

「不妊治療は、すごろくゲームだけど、二人三脚はしてはいけない!」

という事。

私は「後悔」したくないから不妊治療をはじめました。

まだ始まって1週間。

37歳。

年齢的にも期限はある。

男は女ほど現実的ではなく、とてもナイーブな生き物だ。

弱音は吐くな!

同じ方向を向けーーー!!

二人三脚だ!!!!と言って、足首のヒモを固く縛り直して、無理やり引きずって進んでも仕方ないのかもしれない。

だから、足首のヒモは縛らない。

進むスピードも、まちまち。

夫のほうが後れを取るかもしれない。

でも、

途中、へこたれそうになる時や、絶望を感じるとき、

夫に手をつないでもらえたらそれでいいかなと思います。

つないだ手は簡単にほどける。

同じスピードでは進んでいかないすごろくゲームだけれど、

ゴールだけは一緒に切れるように。

夫の道しるべにもなる覚悟で、

妻のみなさん!強く、たくましく、頑張りましょう!

木崎ビビ子

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